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グラフ自体を書き換えてみることで、いろいろな発想が湧いてくる。
よくある例だが、固定費と変動費をきちんと分解して、売上と損益分岐点と一緒にグラフ上に表示するだけで、今会社がどういう状況にあって、次に何をすればよいかが自明になったりする。
要は、グラフ発想は、次の一手を考えることが容易な、創造力につながる図解の技術の一種だと考えておけばよい。
さて、これら三つの応用スキルの場合、「そのものズバリ」という入門書があまりない。
発想法に関する本、たとえばD・B博士の著作やKJ法、NM法といった発想の技術を解説したものが、かろうじて役に立つ程度だ。
これら「創造力」系の応用スキルを身につける第一歩として入りやすいのは、定量化、グラフ発想、クリエイティブ・シンキングというスキルそのものについての書籍ではなく、右脳と左脳を柔軟に使う練習ができる本だろう。
たとえば、私自身は、今でもときどきTさんの『頭の体操』(K)を読み返している。
さまざまなクイズを解いていくことで、右脳と左脳の両方を使って柔軟に考えていく感覚が出てくる。
クライアントの経営幹部向けに戦略発想のトレーニングをする際にも、クイズを出して、自分の頭の使い方のクセを把握してもらうことから始めたりもする。
『頭の体操』だけではいくら何でも、と言う方は、それに加えて、右脳を使うことの重要性を語った脳科学関係の書物を読んでみるのもよいだろう。
さらに、柔軟な発想の実例を体感させてくれる本を読むのも効果的だ。
クリエイティブ・シンキングの実例とはこういうものかと納得させてくれる。
たとえば、Nさんの『創造力』(K社)という本。
この中に出てくる南極越冬隊のエピソードが強く印象に残っている。
第一次南極越冬隊が派遣されたとき、そもそも南極で冬を過ごすにあたって、何が本当に大変かわからなかった。
例えば、マイナス六○度にもなる厳冬期に、宿舎から離れたドラム缶置き場からドラム缶を取ってくるだけで命にかかわる。
でも、そんなことは出発前に想像できるわけもない。
だから、何とかそこからパイプか何かで油が流れてくる仕組みを作りたいということになった。
ところがパイプの余分などありはしない。
さて、どうしたか?さて、今度は「心の使い方」に関するスキルを見ていこう。
短い真鋪のパイプが一本だけあった。
また、けが人が出るといけないから包帯は大量に持ってきていた。
そこで、パイプを包帯でぐるぐる巻きにして水をかけて、五分外に出して凍らせる。
その後、中にお湯を入れればパイプだけ取れる。
そうすると固まった包帯がパイプ状になるのだ。
そうして、ひたすら氷と包帯でできたパイプを作っていった。
パイプ同士の接着は簡単だ。
水をかければすぐに凍ってくっついて、絶対動かない。
それで遠く離れたドラム缶から油を流してくることができるようになったというのだ。
これぞまさに、クリエイティブ・シンキングの象徴のようなエピソードだ。
「頭の使い方」に関するスキルは、哲学、論理学、数学、コンピュータサイエンス、脳科学、といった理科系の学問に、そのエッセンスが含まれているものが多かった(モデル構築のところで触れた社会学、社会心理学という分野も、文科系の中では、統計的分析などが必要で理科系的要素を持っている)。
一方、「心の使い方」に関するスキルは、心理学の諸分野との関連が強いのは当然として、演劇、演説術といった学問の世界から離れたソフトな世界から、多くを学ぶことができる。
ベーシックスキルのうち、プレゼンテーションについては、あまり説明の必要はないかもしれない。
多くの人を動かしていく上で、効果的なコミュニケーションが必要なのは自明の理だ。
ところが、皆さんも感じられたことがあるだろうが、話し手の力量によって、相手に伝わる度合いは大きく変わる。
生意気な中学生・高校生だった頃を思い出してみると、生徒の前に立って話すのが商売の先生方の中でも、随分と差があった。
話す内容がはっきりと伝わり、聴衆である生徒をひきつけることができる先生もいれば、どうもおっしゃることがよくわからず、生徒がまったく集中して話を聞かなくなる先生もいた。
同じような経験をした方も多いだろうが、この先生方の違いは、言ってみればプレゼンテーションの力量の差だ。
話しているときにどこを見るか(視線)、声のはりや大きさをどう使いわけるか(抑揚)、身振りはどうか(ボディランゲージ)、といったプレゼンテーションの基本ができているかどうかがまず分かれ目。
その上で、伝わりやすい言葉を選択できるか、難しい内容を簡単に説明できるか、というコンテンツの良し悪しが問題となってくる。
プレゼンの初歩的トレーニングは、あちこちで見かけるし、また書籍も出ている。
これ以外にも、一昔前にはやっていた雄弁術とか有名な演説を集めた本なども、プレゼンテーションスキルを学び始めるには、案外役に立つ。
最近流行の「音読」の本を買ってきて実際に声を出して読んでみるのもよいかも知れない。
優れた組織には不可欠だが、持っている人は少ないさて、ファシリテーション。
会議の進行役が、ファシリテーターと呼ばれるように、議論を円滑に進めていくスキルだ。
私が見るところ、優れた組織とそうでない組織の差を分ける大きな要素のひとつは、このファシリテーション・スキルを持った人が存在するか否かだ。
言い換えると、ビジネスリーダーとして、組織をどんどん動かしていくためには、ファシリテーションは必須のスキルなのに、それを身につけた人が足りない会社が多い、ということになる。
ベーシックスキルの最後は、ネゴシエーション。
「ハーバード流交渉術」などといった本をすでにお読みになった方もいるだろう。
この分野には、どうやら二つの流れがある。
心理学の側面から、相手との関係で優位に立つ、というスタンスに立ったスキル養成を調うもの。
そして、ゲーム理論をベースにして、双方たとえば、根回しが済んだ内容しか会議にかからない会社、あるいは逆に、出席者が全体の流れを無視して、言いたいことだけを勝手に言い合い、結局何も決まらない会社。
ファシリテーションができれば、こんなことは起こらない。
ファシリテーションという単語には、「促進。
促すこと」という訳語が当てられるように、このスキルの一番のミソは、さまざまな意見を引き出すということだ。
ただし、その後で、出席者を導いて、何らかの結論に持っていくということも重要だ。
言いっぱなしの会議ほど、時間のムダなものはない。
このスキルは、後述する「アクティブ・リスニング」の基礎だと考え、入門編として「一芸型」の雑誌特集などをさらっと読んでおくだけでよいと思う。
本当の交渉の場面では、実は「人間力」の要素が相当ものを言うので、スキルを身につけるとっかかりとするのなら、心理学アプローチとゲーム理論アプローチの両方を、簡単にさらっておけば十分だと思う。
にメリットがある「プラスサム」になる方向に交渉を導いていくというスキルを重視する次に応用スキルに移ろう。
まずは、アクティブ・リスニング。
一見矛盾した話に聞こえるかもしれないが、よりよい説得のためには、話す技術よりも聞く技術のほうが重要だ。
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